ロゴ

患者と医療者をつなぎ、日本のよりよい医療を実現する
 

タイトル
  患医ねっと > 実績 > 薬剤師向け執筆の実例
 
 
=目次=
  
ホーム

業務内容

実 績

お問い合わせ
◆薬剤師向け執筆の実例
患医ねっと鈴木信行が薬剤師向け冊子への投稿原稿を一部改変し紹介します。

 
◆わがまま患者のこれって独り言!?
 
■私ってわがまま?
私・・・47歳。生まれたときから二分脊椎症という病気による身体障がい者。また、20歳で精巣がんになり、手術と化学療法で治療。しかし、製薬会社の研究所に就職して1年目の24歳、そのがんが再発、転移し、再度の手術と化学療法。それから20年以上が経ち、昨年は、新たに甲状腺がんが見つかりました。
「Stageで言うとWですね」
主治医の淡々とした口調は、私に冷静さを失わせないためのようでした。
そんな患者の立場の私から、薬剤師への期待をお伝えしていきます。
わがまま? 期待? 薬剤師のあなたにはどのように感じられるのでしょうか? 少しでも行動変容へのきっかけになってくれることを願っています。

■悔しいいまの認識
「薬剤師って何ができるんですかぁ?」
「薬を処方箋通りに詰めているだけでしょ」
「薬局では、とにかく早くしてほしいんですよね」
患者仲間からは、薬局や薬剤師に対して、そんな言葉ばかり聞こえてきます。率直に言えば、医師には期待するのに、薬剤師にはあまり興味ない・・・。厳しい言い方をしていますが、それが「今の」現実。
これを読んでいるあなた・・・悔しくないですか!?
私は、悔しい!
もう、薬剤師ではない私が熱くなるのはおかしな話ですが、薬剤師ができること、知識、技量、そして可能性を全くわかっていない患者たち! 
その今を、一緒に変えていきましょう! 
「これからの」薬剤師はもっと患者から必要とされる存在であってほしい・・・と強く思うのです。

■激変を迎えている薬剤師たち
薬学部6年制導入、患者のための薬局ビジョン、かかりつけ薬剤師指導料の算定要件への組み込み・・・。まさに、薬剤師たちの社会は、大激変の時代を迎え、従来の業務や思考に縛られていると、廃業せざるを得ない時代が来ました。
これはピンチですか? チャンスですか?
変われない薬剤師にはピンチでしかありません。以前はこうやっていた、前例がなければできない、そんなことをいつまで言っている経営者は、数年後には薬局経営はできていないことでしょう。
リスクに果敢にチャレンジする、パイオニアになる、そんな経営ができる薬局だけが生き残っていく時代がきていると言えます。
それは薬剤師一人ひとりも同じ。毎日同じことの繰り返しに疑問を感じ、指示がなくても行動し、新しいことに興味がわき、そして、患者に自らのできることをしっかりとアピールする。そのような薬剤師だけが患者からも慕われ、今後はさらに輝けるでしょう。
薬剤師の二極化・・・患者から必要とされるか、淘汰されるか・・・が進みつつあります。

■薬剤師の存在意義を問い直す
薬剤師が大きく飛躍できるチャンス到来のいまだからこそ、薬剤師としての存在価値を考え直してみましょう。
患者の私が薬剤師に期待することは、私の「健康な生活を確保」です。
これは、誰もが知っている薬剤師法の第1条の一部。薬剤師の存在意義は、当然、国民一人ひとりの健康な生活を確保することです。
・・・でも、かかわっている患者の「健康な生活」をあなたは知っていますか?
そもそも、私の仕事や生活スタイルを薬局で薬剤師から聞かれたことがありません。どうやって私の生活を把握しているんだろう? いや、していないですよね、絶対に(笑)。

■薬剤師がすべきは生活の把握
まず薬剤師がすべきは、目の前の患者の確保する「健康な生活」の把握です。だって、それが、あなたが患者にかかわる目的なのですから。そして、目的に向けて医療がある。その関わりの中で薬剤師の存在価値が生きるはずです。
例えば、患者の趣味、生活スタイル、食事の趣向、家族構成はわかっていますか? そして、何よりも病気に対して、どういう気持ちでいるか、本当にわかっていますか?

■私が治療を受ける理由
「あなたは、どう死を迎えたいと思いますか?」
がん、脳卒中、心疾患、老衰、事故 ・・・ 様々な死の迎え方があります。
私は、がんがいいのです。QOLがある程度、最後まで保たれていて、自分の最後を自分が把握できる。
いま、私は甲状腺がんのStageW。まさに、自分の希望とする死に方ができる切符を手に入れました。
しかし、私はがんの治療を受けています。なぜでしょうか?
薬剤師にそのような話を聞かれたことはありません。まるで患者は誰もが病気を治したがっていると思っているかのよう。それは、本当に患者の希望なのですか? 
一人ひとり「健康な生活」の定義は異なります。それを確認するところから、薬剤師の仕事は始まると思うのです。

■治療に取り組む理由
では、私はどうして治療をするのでしょう?
理由は二つ。
一つは、健在の両親よりも早く死ねない、私に献身的にしてくれる妻への感謝、という家族への思い。
もう一つは、情熱をもって私を支援してくれる医療者への恩返し。
そう、自分のために病気を治したいという強い意志ではなく、周囲の人のためにがんばろうかな、という感覚なのです。そういう患者は少なくないと思います。薬剤師のあなたが日々接する患者はいかがですか?
そういう患者の生きる意思や心理状態を把握せずに服薬指導しても、あなたの言動と患者の気持ちはすれ違うばかりだと思うのです。

■患者の健康な生活とは?
薬剤師が確保すべきは「患者の健康な生活」。
健康とは病気がない状態を指しているのではなく、本人が望む生活をできる状態にしていくことだと私は考えています。
例えば、山登りをするのが生きがいの方と、家でテレビを見ているのが大好きな方では、必要とされる身体は違うのですから、当然、薬剤師としてもかかわり方が変わるはずです。あなたは、目の前の患者さんの生きがい、趣向、生活サイクル、特技、そして人生観を知っていますか?

■患者の健康な生活を聞き出すには
患者からすれば、薬剤師のあなたの存在は「あなたはなにもの?」という感覚です。そんな方に、いきなり自分の生活などを聞かれても、答えにくいものです。
まずはあなた自身が、自分の生活について少しでいいのでオープンにしてほしいです。例えば、患者に渡す名刺の裏に、好きな食事や座右の銘などを書くなど、些細な工夫で患者はあなたに親しみを感じ、自分のことを話しやすくなるものです。
お互いに顔や名前を憶えてこそ、患者は自分の生活をあなたへ話せるようになるのです。
先日、見学させていただいた薬局では、初診時にアンケート形式で生活情報を得ていると言っていましたが、それで本当に充分なのでしょうか? あなた自身も、2,3年たてば、生活サイクルや趣味だって変わってくるでしょう? それを把握せずして、健康な生活を確保することはできないと、私には思えるのです。

■服薬指導からの脱却
意外に感じるかもしれませんが、これからの薬剤師の重要な業務は服薬指導ではなく、服薬チェックにシフトすべきだと考えています。
現状では、服薬指導として、患者に対して一方的に情報を提供する薬剤師が多くいます。本来、「患者が理解する」のが目的のはずですが、まるで「患者に説明する」のが目的のよう。理解している患者への説明は意味がないですし、逆に、何回説明してもわからない人もいます。つまり、薬剤師は、相手の理解度をチェックしなければなりません。
学生の頃はテストがありました。あなたは薬剤師の資格を取るために国家試験も受けました。いずれもどうやって学んだかではなく、理解しているかをチェックされたのですよね?
先日、私はある病院で看護師から指導をされたので、その様子を紹介します。その看護師はタブレットPCを私に渡して、動画サイトに登録されているある動画を見るように指示し、退席。そして数分後に戻ってきて、2,3個の質問をしました。まさにテストして、指導終了。これでいいと思うのです。
薬局では、どうやって患者の理解度をチェックしているのでしょうか?
薬局でも、工夫することで、薬剤師が行っている服薬指導の多くは自動化など可能でしょう。それよりもチェックすることに時間と手間を割くべきだと私は考えています。

■質問の仕方
薬剤師の対話法でも工夫することで、患者の理解度や生活に関する話を引き出すことができます。
その原則は「はい」「いいえ」で答えられる質問をしないこと。
例えば、「この薬を1日3回飲めますか?」ではなく、「この薬はいつ飲むことにしますか?」。
例えば、「医師や私の話で分からないことはありますか?」ではなく、「医師や私の話で分からないことは何ですか?」。
質問の仕方一つで、薬剤師と患者はよりよいコミュニケーションのきっかけを作ることができます。時に急いでいるという患者も、実は薬剤師とのやり取りを面倒と感じているだけかもしれません。「急いでいるのですか?」ではなく「何分までお時間があるのですか?」と聞いてみると、本当に急いでいるのか、方便なのか、わかります。

■情報は共有する
患者の確保すべき生活の情報は、スタッフ同士での共有が必須です。「毎朝5時に起きて夫婦でラジオ体操に行くのが生きがい」などは、大切な顧客管理情報の一つであり、それが患者の治療目標です。
本来、薬歴管理システムには、この目標となる情報が真っ先に表示されるようにすべきと感じています。しかし、私が今までに拝見したいくつかのシステムにおいては、備考などのように付則情報として登録できるようになっていますが、あまり重視されていません。せっかく薬剤師が得た貴重な情報をどう管理するかは、スタッフ内で考えたほうがいいかもしれませんね。
 
■退院はめでたい?
「退院されたんですね。おめでとうございます」
久しぶりに来てくれた患者に言う方も少なくないと思いますが、本当にめでたいのでしょうか?
患者の人生観や生活情報を把握し、薬剤師間での共有が大切だと、前述しました。
私の友人は、抗がん剤治療を入院から在宅へ切り替えました。主婦としての毎日の買い物や洗濯物の干す作業が辛いので、「入院生活のほうがよかった」と言います。
別の末期がんの友人は、退院が決まりましたが、「とうとう医師にも見放された」と言いました。
もちろん、基本的に、退院は病気の回復を示す指標の一つであり好意的にとらえられますが、あえて退院の意図を確認し、患者の胸の内を聞き出すのは、薬剤師としての価値があると思うのです。

■患者に興味を持つ
このように患者は、同じ治療に対しても、感じ方、考え方は異なります。疾患に対してどう向き合っているかも患者によって違います。その患者の意識に応じて、薬剤師は対応を変える必要があります。
目の前の患者は、どんな思考や生活をしているのか、興味を持つことが重要。薬剤師としてのかかわり方が見えてくるのです。先日、知り合いの薬剤師の紹介で、がん患者が私を訪ねてきました。その薬剤師に確認したところ、患者と会話している中で、同じがん患者である私と会わせることで生きる意欲が得られそうと判断したとのこと。私もうれしかったです。
逆に言えば、興味がなければ、あなたに興味を持ってもらうこともない、そんな冷たい関係性。その中で、満足な対話ができるわけありません。

■患者の理解度チェック
薬剤師の役割は、患者に必要事項を説明することではありません。患者に必要事項を理解してもらうことです。そして、前回、「その原則は、「はい」「いいえ」で答えられる質問をしないということ。」とお伝えしました。残念ながら、いまだに一方的に説明して、最後に「聞きたいことは?」と意味ない質問し、それで服薬指導をしたという満足を感じている薬剤師が多くいます。
患者の理解度をチェックするにはどうしたらよいでしょうか?
例えば、待ち時間に自分の生活スタイルと服薬タイミングを書けるシートに記入させる、この3日間の薬の服薬タイミングを思い出させる、など、手段はいくつも考えられます。
そして、最後に聞くのは「不安や疑問を教えてください」というように、質問があることを前提にした問いかけです。

■患者教育
将来、薬剤師がすべき業務の一つに患者教育があると考えています。
セルフメディケーションという言葉が広まりつつある中で、患者はなにをどうしたらいいのかわかっていません。
患者一人ひとりに応じた教育カリキュラムを作り、教育目標と患者が学ぶとよい事項を明確にしていくのです。もちろん、患者の全員ができるわけではありませんが、日本のセルフメディケーション文化を根づかせるためには、ある一定以上の国民の意識を変える必要があり、それをできる医療職は薬剤師以外に見当たりません。
学ぶべきは、病気や疾患、薬に関する情報ではありません。医師や薬剤師とのかかわりの中で患者がどう立ち振る舞うべきか、自分の生活を大切にしつつ、医療をどう組み込むのか、そして自分の人生観を持ち、それを医療者にどう伝えていくのかといった内容でしょう。
重要なのは、医療者任せの医療から、自分が主体になるという自主性の育成だと考えています。

■場を作る
教育というと薬剤師が患者に何かを教えると捉える方が少なくありません。
それは、私が言う患者教育ではありません。
薬剤師が持つ専門的知識は薬剤師が常にかかりつけになっていればいいのです。
必要なのは、例えば、薬剤師や医師などにどう自分の症状を伝えるのか、災害時に備えて日ごろから何をすればいいのかなど、患者としての質を上げることにあり、それは申し訳ないのですが、薬剤師が教えられる内容ではありません。
そのためには、患者や医療者がともに学んだり、自治会などの地域が協力して情報を交換するなど、幅広い観点での教育を私は期待しています。
そのためには、薬局・薬剤師ができることとしては、教育者になるのではなく、「場を作る」という立場に注力することです。
場を作るとは、多くの人をつなげる拠点になるということでもあります。
みなさんの薬局には、毎日何十人もの方が訪れるのですよね? その中には様々な専門分野の方がいるのではありませんか?
そういうネットワークを作るチャンスをあなた方はどれぐらい活かしているのでしょうか?
参考までに、私たちがしている「場を作る」活動のペイシェントサロン協会があります。詳細は【こちら】からご覧ください。

■お薬手帳の有効活用
薬剤師は患者教育を進めるにあたり、とてもよい道具があります。それがお薬手帳。
お薬手帳を、患者、薬剤師、医師の交換日記として活用してはいかがでしょうか?
まずは、患者に通院日の朝に、残薬数をお薬手帳に書き込んでもらうのです。それを医師に見せ、処方数から減薬してもらうよう、薬剤師が進言すればよいのです。
次のステップとして、医師や薬剤師が患者に言ったことを患者にメモさせてはいかがでしょうか? そうすれば医師が患者に伝えている病名な指示などを薬剤師が把握することもでき、今後の治療計画も把握できるかもしれません。
時々でよいので、薬剤師がお薬手帳にコメントを書いてくれると患者のモチベーションも上がります。「最近はお薬をきちんと飲めており、体調も安定していますね」のように。
さらに、「朝起きたらふらつきあり。新しい薬の副作用かな?」のように、患者が自主的に生活する中で感じた体の不調や疑問を書き始めたら、よりよい医療の提供につながるはずです。

■患者を有効に待たせる
薬剤師からは毎日の忙しさについて話を聞く機会が多いです。患者をこれ以上は待たせられない、と。
果たしてそうでしょうか?
遊園地では堂々と待ち時間を掲示しています。銀行では待っている人数が表示されています。患者は、待つのが苦痛なのではありません。待ち時間の予想がつかないこと、そして、待つことに対する価値を感じられないのが苦痛なのです。大幅に待たせるのならば、受付時に待ち時間予想や待っている人数を伝え、待ち時間中に患者がやるべき課題を提示すればよいのです。ここで何を提示するかが、薬局の「個性」を患者に見せられるチャンスです。
例えば、患者教育をするのか、遊ぶ時間にするのか、何もぜず単に待ってもらうのか・・・。
患者教育が必要だと思う私としては、ぜひ気楽に学べる教材を用意してほしいです。ぜいたくを言えば、その教材は毎回違ってほしい。そのためには、複数の店舗でそれぞれ教材を考えて、定期的に回していくとよいかもしれませんね。
患者の待ち時間は、有効活用すればよいのです。その発想をもって、薬局を見直してみてはいかがでしょうか?
 
■患者からみえない個性
薬局の個性とはなにでしょうか? 残念ながら、今の多くの薬局には個性を感じられません。どこでも同じに見えるのです。
例えば、小児向けを強く打ち出すならば、外から子どもの遊べるスペースが見えるように設置したり、子どもが好きなキャラクターのぬいぐるみを外に向けて置き、子どもが入っても安心だと見せるとよいでしょう。在宅に強い薬局ならば、薬局名が書かれたおそろいの自転車を店の前に並べてはいかがでしょうか?
子ども向けのおもちゃを売っている店はどう見せていますか? 宅配ピザ屋の店頭はどうなっていますか? 患者、つまり薬局が一番関わりたい方に対して、どう個性を見せるのかという工夫がほしいです。

■薬局のコンセプト
薬局の理念やコンセプトをもっと患者に伝えてほしいです。
薬局の経営者が薬局というツールを使って実現させたい社会像が理念。それを客にわかりやすく伝えるのがコンセプトと考えてよいでしょう。理念とコンセプトは、その薬局の憲法であり、スタッフが業務の中で判断に迷ったとき、言動の拠り所にするものです。例えば、時間がかかっても一人ひとりへの丁寧なかかわりを大切にするのか、スピードを重視するのかは、その薬局の理念とコンセプトによって決まるのです。
患者は、そのコンセプトを感じ取って、薬局を選べるという姿が、望ましいのです。レストランを考えてほしいのです。落ち着いて長い時間を過ごす店と短時間で腹を満たせばよい店は、見た目で分かるようになっています。薬局も見た目で判断できるようになってほしいです。

■コンセプトを伝える
コンセプトを患者や市民に伝えるには様々な方法があります。
設備投資をできるのならば、外観や店舗の色、看板のデザインなどもコンセプトに合わせて作ることになります。しかし、それほどの投資がなくても、表にA型黒板を置いて「あなたの不安や疑問を専門家がすっきり解決!」のようにコンセプトに基づくコメントを書く、市民向けのイベント情報のチラシを店頭に置いて誰もが取れるようにする、など、方法はたくさん挙げられます。
ある薬局はたばこの自動販売機を店頭においていたのですが、いまの時代にそぐわなくなってきました。私たちの提案により、逆に禁煙支援薬局として再出発しました。

■スタッフが自分のビジョンを持つ
スタッフのあなたは、理念やコンセプトがある薬局で働くことを通して何を実現したいのかというビジョンを持っていますか? 単に「薬剤師」としての役割ではなく、どんな薬剤師になるのでしょうか。例えば、患者の不安から逃げない、患者を笑顔にする・・・。それが薬局の理念、コンセプトの先にある具体的なことであれば、経営者とあなたはよりよい関係になれるでしょう。

■スタッフのビジョンと合わせる
薬局の理念やコンセプトは、スタッフ一人ひとりが理解し、同意していることが大切です。逆を言えば、雇用関係になる際に、理念、コンセプトを明示し、それに基づく自店ならではの取り組みを伝え、そこへの協力を前提に雇用関係を結ぶべきです。
当然、コンセプトを実現させるには、オリジナルの業務が多数発生します。それは、そこに勤めるスタッフにとっては未経験です。それを率先して役割を担うためには、雇用前に合意しておく必要があります。残念な話ですが、薬剤師の募集広告を見て、理念やコンセプトを書いている薬局はほとんどありません。スタッフは給与などの条件だけで働くのではありませんよね。逆に言えば、給与などの条件にしか興味がないような薬剤師は、この先の日本では生き延びていけません。

■スタッフのビジョンは患者へも伝える
「薬剤師は患者に名刺を渡す」と前述しました。
その名刺には、薬局のコンセプトに加え、自分のビジョンを明示してほしいのです。どうしても目の前の仕事に忙殺され、自分の目指す姿を忘れがちですが、患者に渡す名刺に書かれていることで時に患者から指摘されることでしょう。
それは、患者とのよりよい関係性をつくるためにも有効な手段となります。あなたの成長プロセスを共感し、協力してくれる応援者も出てくるかもしれません。

■かかりつけとは、指名されること
国が進めているかかりつけ薬局構想は、他店との差別化を図り、患者に指定されることをいいます。そのためには、そこで生き生きと働き、患者のために輝く仕事をしているあなたの力が大きいのです。
薬局を指定するのではなく、「あなたを指名したい」。そういう薬剤師と出会いたいのです。地域でナンバーワン薬剤師。あなたは何がナンバーワンでしょうか? 知識、技術ばかりではなく、傾聴力、笑顔、話題の豊富さ・・・様々なナンバーワンがいていいのです。その自信をもって、患者にアピールしてくださいね。

■常にPDCAを考える
PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(反省)→Act(Action)(再考)の流れをいうビジネス用語(和訳は私が少し変えています)。
何事も、考えたらやってみて、そして結果としてどうだっかを省みて、次のステップに行くためにどうするかを考えましょう、ということ。

薬局においても、当然PDCAはたくさんあります。
例えば、患者にいくら指導しても行動が変わらない・・・。
患者さんに薬を飲む大切さを納得してもらうと計画、実際に指導の際に実行、でもどうやら飲んでいないみたいと反省、では何が足りないのだろう・・・そうか、目的意識を持たせていないよなと計画を再考。
PDCAの繰り返しです。

PDCAの中で一番重要なのは「C」だと私は考えます。
つまり、薬剤師の行動を、どう反省にしていますか?

反省は、自分だけでは盲目になります。客観的な目や意見を取り入れることが必要です。
そのためには、スタッフ同士できちんと意見しあう、患者にアンケートを取るなど、いくつかの方策が考えられます。
薬局によっては、覆面調査員を送り込んで、薬剤師の対応を評価しています。あなたの薬局ではいかがでしょうか? (この章のみ 2017.4.12著)

■最後に
いかがでしたか?
単にわがままでしたか? それとも、何かあなたの行動変容につながったでしょうか?
薬剤師がもっと本来の力を出せる医療現場が実現するよう、私はあなたとともにがんばります。

■著者紹介
鈴木信行  1969年生まれ。患医ねっと代表。甲状腺がんの闘病患者。患者の立場から医療を変えるべく薬剤師向け研修や講演活動などを推進中。http://www.kan-i.net
 
2017.1.21著
 
◆主な対象者
・薬局薬剤師
 
◆価格事例
・4回連載 80,000円(税別)
 基本的にご依頼元の内規に従います

◆お問い合わせ
こちらから】お気軽にお問い合わせください。

copyright kan-i.net Suzuki Nobuyuki